地獄観光―死者に会える霊地、立山

富山県に位置する霊山・立山の豊かな自然、美しい景観、雄大な山容は古くから人々を魅了してきました。近代以前の日本において立山の名が広く知られていた理由は、その美しさだけではありませんでした。本来は地底深くにあるはずの地獄が、立山の山中に存在し、そこでは生者が死者と再会できるという立山地獄にまつわる説話が語り継がれ、立山は「死の象徴」としての意味を帯びていくようになります。当講演では、立山信仰の歴史を概観しつつ、さまざまな文芸作品に描かれた立山地獄像を分析し、その変遷について考察します。