前近代日本と法―人文科学からのアプローチ

前近代日本における法の研究は従来、法律や法文書の形式や役割を中心に行われて来ました。しかしここ数十年では、法社会史、つまり社会における法秩序形成や習慣、そして、法を利用する人々の、局面に応じての法の読み替え、矛盾との直面、また生活の中での機能を考察する研究が進められています。また「生きた法」としての動態的な姿を考察する研究が進められています。この社会文化的な研究への方向転換をきっかけに、生活文化における法の重要性にも注目が集まるようになりました。近年では、法がどのように法廷で披露され、演劇で演じられてきたか、宗教や文学にどう関わってきたか、そして、ジェンダーにまつわる表現や行為にどう組み込まれてきたかといったことへの興味も高まっています。本シンポジウムでは、前近代日本(主に1600年以前)の法と生活文化、そして法の人文科学的研究の多様な可能性について、さまざまな観点から切り込んでいきたいと考えています。