博物館はなぜ存在するのか? 「ところ」「もの」「ひと」の現実と対峙する
博物館の存在意義は、現在、大きな転換期を迎えている。国際的には 2022 年にICOM の「博物館の定義」が改訂され、博物館は常に、時代や社会とともに変化・進展してきた。国内でも 2022 年に博物館法が一部改正され、根拠法や資料の扱い、さらに社会とのかかわりなどに新たな観点が加わり、博物館のあり方に大きな変化を求めるものとなっている。
博物館の役割が時代の要請に応じてますます多様なものとなりつつある中、社会と響きあう姿を創り上げていくためには、「博物館とは何か」を考えることをしていかなければ道筋を見出すことはできない。つまり、博物館の理論と実践の考究、すなわち博物館学という思考のもとでこそ、現在の社会に適った博物館のありようが導き出せるのではないだろうか。博物館学は博物館の羅針盤となるはずである。そのためには、博物館学という考究のあゆみや議論をふり返り、現在および将来の博物館、さらには社会に対してこの学がどのような役割を持ち得るのかの追究が必要と考える。
近年多発する大規模自然災害やコロナ禍の中において博物館は、不要不急の施設として取り上げられたりしている。しかし、そのコレクションは学術研究の基盤となるものであり、博物館は経済的・観光的観点においても貢献できる存在である。さらに博物館は、学びの拠点であることはもとより、心が病んだ時や傷ついた時、人々の拠り所としてなくてはならない存在でもある。
このような認識に基づき、本シンポジウムでは「博物館はなぜ存在するのか?」を命題に掲げ、博物館の基本的要素である「ところ」「もの」「ひと」の立場から従来の博物館学各論を見直し、日本における博物館の存在意義や活動のあり方について改めて問いかけをしたい。